Tajimi Express Co.,Ltd Presents

鉄道アーティスト・鉄道コンテナアドバイザー小倉沙耶の通運ってこんなにおもしろい!

第2回 通運間クロスドック実施【後編】

最適な「代行輸送」はどれ?

前回の続きです。

 

普段利用しない貨物駅に入り、通常とは違う伝票を持ち、他のエリアの通運ドライバーと連携して作業を行うのが、鉄道コンテナにおけるクロスドック作業。現場の負担をいかに低減させるか、意見の擦り合わせが行われました。クロスドックを行うにあたり、本来ならば列車で輸送するべきところをトラックで代行輸送する形となるため、貨物駅からコンテナを持ち出す際に伝票は「代行輸送中」の状態となります。代行輸送もその形態によって細分化されており、今回はJR貨物側とも調整して「区間代行」を選択し、北長野駅のドライバーズシステムを通したのですが、IT-FRENSと連携がとれた状態になりませんでした。作業自体は滞りなく行えたものの、交換した互いのコンテナがそれぞれの駅に到着して再びドライバーズシステムを操作するまで、宙ぶらりんの状態が続いてしまうため(手動で諸々書き換えることは可能です)、第一回の南松本駅で行ったときの「通常代行」で行うのが良いという結論に。

 

訓練を行うからこそみえてくるもの

システム上の動きというのは、机上ではあれこれ考えられるものの、実際に作業を行わなければ見えてこない課題などもあります。今回は、JR貨物のシステム担当者がフォークリフトに同乗し、コンテナ積み下ろしにおける操作毎にリフトの画面上でコンテナ状態がどう変わるかを、ひとつひとつ確認しました。

実は昨年、山陽本線で不通区間が発生した際、広島駅において通運間クロスドックを行ったそうです。突然のことで、訓練ももちろんなし。伝票上でイレギュラーな事態なども起こったそうですが、無事に完遂。ならば、ここまで丁寧に予行練習しなくても良いのではないかと思ったのですが、多治見通運関谷社長は、今回のクロスドック後の意見公開の場でこう仰いました。

 

「きちんと作業を確立して、マニュアル化を行いたい。そうすれば、他の駅でも展開できる」

 

JR貨物としては、不通区間における代行輸送に関しては、オール通運会議を行った上で、トラック代行輸送としてIT-FRENSに落とし込むというスキームが既に存在しています。こちらとの住み分けや各所費用の按分など課題もありますが、すぐにでも、そして少しでもコンテナを動かせる体制をつくるというのが通運間クロスドックの趣旨であり、そのためには、平常時の予行練習や意見の擦り合わせをどれだけ行えるのかが重要だということを、この言葉で改めて感じました。

 

「2つのスキームがあるとどうしても大きい方が優先されてしまう。(代行輸送費などの)金額がクローズアップされてしまうが、時間が優先であるべき」

 

とは、栃木県北通運岡崎取締役による弁。オール通運会議によって代行輸送量やルートが決定されるまで日数がかかるからこそ、クロスドック体制を確立することは急務となります。

今後も動きがありましたら、このコラムでお伝えしたいと思います。

小倉沙耶

PROFILE

小倉沙耶 こくら・さや

鉄道コンテナアドバイザー・鉄道アーティスト
都市交通政策技術者

1980年3月30日生まれ、愛知県豊橋市出身で現在は兵庫県伊丹市在住の鉄道アーティスト。子供の頃から母の実家である長崎に寝台特急「さくら」で何度も帰省し、その鉄道の旅情に魅了され、鉄道ファンとしての情熱を抱く。
2002年から「鉄道アーティスト」としての活動を開始し、テレビ・ラジオ出演や執筆活動だけでなく、鉄道イベントの司会や企画、講演なども手がけている。モットーは「鉄道に関わる全ての方が、笑顔でいられるためのお手伝い」。
2009年には明知鉄道観光大使に就任し、2013年には京都大学大学院工学研究科低炭素都市圏政策ユニットより都市交通政策技術者(第112号)に認定された。
2022年からは一般社団法人交通環境整備ネットワークの審議役を務め、通運の経験を生かし、鉄道コンテナアドバイザーとしても活動している。2021年には出産し、乳幼児連れでの公共交通利用促進と周囲の理解についてメディア・イベントなどで積極的に発言している。
鉄道趣味の中心は気動車・貨車・古いレールであり、その情熱を通じて広く鉄道文化の普及に尽力している。