コンテナ輸送を危険から守る、偏積対策の取り組みについて
2023年05月22日(月)
このコラムではこれまで何度か、コンテナ内の荷物の偏り「偏積」についてお話ししています。(『より安全な輸送体系をめざして〜“偏積”のはなし』『コンテナ輸送を危険から守る、偏積対策の取り組みについて』)
偏積は、脱線の原因のひとつとなります。過去には平成24年と26年にJR北海道江差線内で貨物列車の脱線事故が起きました。そして令和3年12月28日にJR西日本山陽本線瀬野~八本松間で起きた脱線事故でも、本来ならば偏積は10%以内でなくてはならないところ、脱線した貨車に積載されていたコンテナはすべて許容値を超えており、偏積率の最大値は 21.5%だったと報じられています。
JR貨物としても、各コンテナの偏積チェックはかなりシビアに行っていますし、通運事業者も対策などを講じているはず。そのなかで偏積率の高いコンテナがすり抜けてしまった原因はいくつかあります。例えば、荷物の積み付け作業を行うのが、荷主や積み付け会社など、通運事業者ではなかったり、そもそも、偏積対策の取り組みに関する責任が明確になっていなかったり。コンテナへ積み付ける際のガイドラインなどもありましたが、それが実際に作業を行う他事業者へ配布されていなかったことなど…
これらを鑑み、令和4年には貨物運送約款の見直しが行われ、責任が明確化されました。それに伴い、運送申込を行うシステム「IT-FRENS」にもチェック欄が追加。
「当社は申込にあたり、貨物運送約款ほか各約款を遵守し、偏積なく適正に積み込みます」
という一文の後ろに、チェックボックスがついていて、こちらをクリックした上でコンテナの運送申込ボタンを押すという流れになり、コンテナ1基ごとに通運事業者が責任を持って偏積対策を行なうことを、文面として求められるようになりました。
同じく令和4年からはコンテナ内の荷姿確認のチェックも強化され、新規輸送の場合、荷物を詰んだ後に荷姿の写真を撮り、偏積率も計算。それらを書面にして保管するようになりました。
ソフト面だけでなく、ハード面でも対策の強化が行われ、JR貨物では、2025年までに偏積の可能性があるコンテナを扱う全ての貨物ターミナル駅(92駅)に輪重測定装置やポータブル重量計、トラックスケールなどを、現場の状況に応じて設置するとしています。
JR貨物、そして各通運事業者がスクラムを組み、より安心安全な鉄道貨物輸送のため様々な偏積対策にトライし、国も周知強化などでバックアップ。中身の見えないコンテナ列車ですが、こういった取り組みが行われていることを、ぜひ知っていただけたらと思います。
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