鉄道コンテナ輸送のBCP対策ってどうなってるの?《物流の安定供給への取り組み—その1》
2023年06月07日(水)
多治見通運とJR貨物東海支社は5月10日に連名で「災害時の鉄道コンテナ輸送に関するバックアップ体制の構築について」というニュースリリースを発表しました。これまで、大規模な災害が発生した場合には『自然災害と通運業界』※でお伝えしたように、オール通運会議を経てトラックや船舶による代行輸送が組まれていました。しかし、会議を経て代行輸送が輸送予約システムであるIT-FRENSに組み込まれるまでには、1週間程度かかり、それまではJR貨物側としてはなすすべがなく、通運側が何らかの手段を講じて、別の形で着荷主までお届けをしていました。
BCPという言葉をご存じでしょうか。Business Continuity Planの略で、日本語では「事業継続計画」といいます。豪雨や地震など災害の多い日本では、これらに巻き込まれた際にどのようにして通常の業務に戻せるか、継続できるかが大きな課題となっています。災害で不通となった場合に輸送が止まってしまう貨物鉄道輸送は、利用を考える企業にとって、BCP対策の上では不安定な存在でした。荷主企業だけでなく、通運やJR貨物にとってもそれは同じことで、どうするかが課題など、これまでは迅速な代替体制を整えることができませんでした。
今回の取り組みは、大規模な災害等が発生して鉄道輸送網の一部が寸断した際に、物流の安定供給を図るため、貨物駅をクロスドックとして活用することによって、輸送網のバックアップ体制を構築するものです。クロスドックとは、荷物を開梱することなく積み替えのみ行う拠点や仕組みを指します。輸送センターなどにも似ていますが、あくまでも積み替えのみ行うものなので、場所と積み替え手段を構築しておけば実行が可能です。
今回の体制を考えるきっかけは、多治見通運関谷社長から、運送部への
「鉄道コンテナ輸送のBCP対策ってどうなってるの?」
という言葉からでした。実際、災害が起きた時に後手の対応になっている状態から脱するために、通運として何ができるのかを突き詰めた結果、まずは付き合いのある通運と手を組み、JR貨物とも協力してクロスドック体制を整えようという形になりました。実際、各通運に声をかけたところ、二つ返事で「お願いします」という声が返ってきたところもあったそうです。
そして5月26日に多治見通運と、協力に応じた高崎通運・栃木県北通運の3社が協力し、南松本駅にて輸送訓練が行われました。次回はその模様をお伝えします。(敬称略)
※『自然災害と通運業界』についてはこちらもご覧ください
http://tajimituuun.co.jp/blog/archives/190
多治見通運の鉄道コンテナ輸送についてはこちらをご覧ください
https://www.tajimituuun.co.jp/railway-container.html