Tajimi Express Co.,Ltd Presents

鉄道アーティスト・鉄道コンテナアドバイザー小倉沙耶の通運ってこんなにおもしろい!

より安全な輸送体系をめざして〜“偏積”のはなし


パロマコンテナ輸送のお話しの中で偏積について少しお伝えしました。トラックでは偏荷重という言い方がなされますが、コンテナでは積み荷の重さが局所的に偏っていることを偏積と呼びます。鉄道コンテナはコンテナを積載するための貨車(以下、コンテナ車)に載せられ、機関車で牽引して目的の駅まで運ばれます。コンテナ車はレールの上を走行しますから、走り装置である台車を履いています。この台車の左右にかかる重量があまりにも違いすぎる場合、特にカーブにおいて車輪へかかる重さのアンバランスさから脱線へと至る可能性があります。

 

2012年と2014年に相次いで起きたJR北海道江差線脱線事故の原因についても、偏積が一因という結論が国土交通省運輸安全委員会からなされ、JR貨物「輪重測定装置」を導入しました。青函トンネルを通るコンテナ車に対し、レールのたわみを測定することで輪重へ換算、輪重比が大きい場合は本州側の東青森駅、北海道側では函館貨物駅にて当該コンテナ車の切り離し作業が行われます。その後、コンテナ車に載るコンテナをすべてチェック。偏積状態が指摘されたコンテナは積み荷を直し、重量計で測定して安全であるという確認がとれるまで、決して青函トンネルを通ることができません。

 

もしも自社の荷物が東青森駅で引っかかってしまったら…近くの通運さんにお願いして直してもらうか、発送駅まで戻してもらうしかありません。どちらも手間日数料金がかかってきます。

 

偏積というのはあってはならないことです。JR貨物と通運の運送上の契約事項である「貨物運送約款」にも「貨物は、床面上にその重量が均衡するよう、かつ、容易に移動しないよう積み込むものとします」と明文化されていますし、各駅でも偏積防止のためのチェック等を行っています。パレット積みの荷物をそのまま載せる場合は、偏りが出ないよう、より注意深く載せます。時には荷主さんに了承を得て、パレット上の荷物の積みかえを行うことも。判断が難しい場合は、コンテナを載せたトラックが駅に到着した後、トラックの沈み具合のバランスを計測して確認する場合もあります。

 

全国通運連盟では、偏積を簡易的に防止するための「偏積防止マニュアル」を作成するなど、より安全な輸送体系のため、多方向から偏積を防ぐための取り組みを行っています。

 

多治見通運の鉄道コンテナ輸送についてはこちらをご覧ください
http://www.tajimituuun.co.jp/railway-container.html

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小倉沙耶

PROFILE

小倉沙耶 こくら・さや

鉄道コンテナアドバイザー・鉄道アーティスト
都市交通政策技術者

1980年3月30日生まれ、愛知県豊橋市出身で現在は兵庫県伊丹市在住の鉄道アーティスト。子供の頃から母の実家である長崎に寝台特急「さくら」で何度も帰省し、その鉄道の旅情に魅了され、鉄道ファンとしての情熱を抱く。
2002年から「鉄道アーティスト」としての活動を開始し、テレビ・ラジオ出演や執筆活動だけでなく、鉄道イベントの司会や企画、講演なども手がけている。モットーは「鉄道に関わる全ての方が、笑顔でいられるためのお手伝い」。
2009年には明知鉄道観光大使に就任し、2013年には京都大学大学院工学研究科低炭素都市圏政策ユニットより都市交通政策技術者(第112号)に認定された。
2022年からは一般社団法人交通環境整備ネットワークの審議役を務め、通運の経験を生かし、鉄道コンテナアドバイザーとしても活動している。2021年には出産し、乳幼児連れでの公共交通利用促進と周囲の理解についてメディア・イベントなどで積極的に発言している。
鉄道趣味の中心は気動車・貨車・古いレールであり、その情熱を通じて広く鉄道文化の普及に尽力している。